
櫻田武です。
「オールマイティな人材になりたい」という人がいます。
言い換えると、自分一人で何でもこなそうとする人です。
ビジネスで言うと、商品開発やセールス、マーケティングはもちろん、経営、プログラミング、デザインなど多様な分野での活躍に憧れている人です。
しかし、学べば学ぶほど、オールマイティな人材など存在しないと言うことが分かってきました。
なぜなら、あらゆる強みはトレードオフだからです。
「人間の能力の限界」ということにもつながります。
たとえば、論理的な人は、コンサルタントになると評価されます。
データやグラフを見せながら話すと、デキるコンサルタントらしく見えます。
しかし、その論理性は、芸術の分野では、ときに邪魔になります。
なぜかというと、論理的に考えると、既存の作品に要素を足したり、引いたりするパクリみたいなモノしか生み出せないからです。
そのため、芸術では感覚や直感を優先した方が、評価される場面が多いです。
もし、芸術の分野で過剰に論理的だと「なんでお前はもっと感覚的になれないんだ?」と、関係者に叱責されるケースもあるでしょう。
このように、ある分野で評価される強みや性格は、別の分野では弱みになるのです。
そして、自分の強みや性格を粘土細工のようにぐにゃぐにゃと変えることは不可能ですよね。
そのため、すべての分野に適応できる“オールマイティな人材”は幻想に過ぎません。
世の中では、複数の分野で結果を出した人が“オールマイティな人材”と評されがちです。
ただ、そういった人も、前述の芸術のように正反対の強みが必要な分野にいけば、凡人以下の結果しか出せません。
こうした現実があるので、“オールマイティな人材”を目指すのは、ムダな努力と言えるかもしれません
重要なのは、自分の強みを磨き上げること。
ちなみに、“オールマイティな人材”という表現は、そもそも完全な和製英語です。
英語圏で「オールマイティ(almighty)」とは、「全知全能の神」といったニュアンスを指します。
人間が神になれるわけがないので、英語圏では“オールマイティな人材”といった表現は一切されないのです。
この表現に関しては、英語圏の方が適切に現実を直視していると言えます。
もしかしたら、この考え方が、それぞれの個性を重んじる海外の考え方のもとになっているのではないかと思っています。
教育のあり方の違いもここになるのかも知れません。
それでは、また。
今日もありがとうございました。
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堂原有美 (著)
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