
櫻田武です。
研究所には、文部科学省からたまにメールが来ます。
今回のメールは、面白かったので、ここでシェアします。
内容ごとに分けてお送りします。
今回は、大学入学共通テストについて、萩生田文科学大臣のメッセージです。
□【萩生田文部科学大臣メッセージ】大学入学共通テストにおける記述式問題について
大学入学共通テストにおける記述式問題について申し上げます。
この問題について、この間、国会での御指摘等も踏まえ、累次にわたり協議を続けてまいりました。最終的に先週及び昨日、大学入試センターの山本理事長から二度にわたり検討状況に関する現状の報告を受けました。
また、昨日は、大学入試センターを訪問し、極めて厳密な体制で試験問題の作成などの試験実施業務が行われていることも伺ってまいりました。
文部科学省としては、大学入学共通テストにおける記述式問題の導入に関して指摘されている課題に対し、どのような改善が可能か、できる限りの方策を大学入試センターとともに検討し、採点事業者に必要な対応を求めるなど様々な努力を重ねてまいりました。
その結果として、一つには、採点事業者に守秘義務を課し、違反した場合の損害賠償等も規定した契約の締結や、採点者等に対し試験実施前に試験問題を類推できる情報を開示しないことなどを定めた機密保持契約の締結などにより、採点業務に関する機密を保つ体制を確保いたしました。
また、採点事業者に対し、採点業務に伴い知り得た一切の情報の漏洩や目的外使用の禁止を契約に規定しているほか、採点業務を受託したことを利用した宣伝行為を、同社のグループ全体で自粛していただき、社会的疑念を招くことのない体制の確保に努めてきました。
さらに、障害のある受験生に対しては、記述式問題を導入することに伴い、解答欄の大きさやレイアウトを変更した解答用紙を用意すること、それでも解答が難しい受験者に対しては、パソコンやタブレットを用いた入力を可能にするためのソフトウェアの開発などを行うなど新たな受験上の配慮を行い、それらをこれまでより早期に公表することとするなど、種々の検討・対応を進めてまいりました。
同様に、採点の質、自己採点と採点結果との不一致の課題についても、真摯に取り組んでまいりました。
大学入試センターによりますと、まず、採点体制については、採点事業者としては、示された採点期日までに採点を完了するために必要な質の高い採点者を確保できる目途は立っているということであります。
一方で、実際の採点者は、採点事業者において、適正な試験等により選抜し、更に必要な研修を行うという慎重なプロセスを経て適任者を得ることとしております。このため、実際の採点者が決まるのは来年の秋から冬になるということであります。
採点の精度を上げることについては、2度の試行調査の検証結果も踏まえ、採点事業者において、当初の予定より更に多人数の視点で組織的・多層的に採点を行う体制の構築や、元教員等の専門的知見を有する者による品質管理専門チームを設け、ダミー答案を活用したチェックや無作為抽出によるチェックなどを行うなど、大学入試センターとしても更なる採点精度の向上を図ることが可能であるということでありますが、採点ミスを完全になくすところまで至るには限界があるということでありました。
このため、各大学での個別選抜の前に、記述式問題の採点結果を本人に開示することも含め検討しましたが、採点スケジュールや各大学への成績提供の開始時期との関係から調整・解決すべき点が多く、少なくとも来年度からこれを行うことは現実的には困難との判断になりました。
その検討に当たっては、共通テストを12 月や1月上旬に早めることも再度検討しましたが、12 月については、受験までに高校の学習内容を終了することができないことや各種の体育大会や文化行事の日程との関係などから難しく、1月上旬に早めることについても、年末年始の時期に、試験問題の配送や厳重な保管などを確実に行う上で問題があり、困難との判断になりました。
自己採点については、2度の試行調査において、国語で約3割が自己採点と採点結果が不一致となりました。これについては、正答の条件に基づく採点の仕方について説明した資料を年度内に周知することに加え、模擬答案を用いた自己採点動画の提供による自己採点シミュレーションの支援なども検討いたしました。これらによって、一定程度の改善が期待できるとのことでありましたが、自己採点の不一致を大幅に改善することは困難であるということでありました。
また、作問の工夫によって、自己採点しやすい設問にすることも検討いたしました。しかし、その場合、論理的な思考力や判断力を評価するという記述式問題導入の本来の趣旨を損なうことになりかねないとの判断に至ったとのことであります。
これらを受け、文部科学省としては、採点体制について、採点事業者として必要な数の質の高い採点者の確保ができる見通しは立っていることは認められるものの、実際の採点者については、来年秋以降に行われる試験等による選抜、研修の過程を経て確定するため、現時点では、実際の採点体制を明示することができません。
採点の精度については、様々な工夫を行うことにより、試行調査の段階から更なる改善を図ることはできると考えておりますが、採点ミスをゼロにすることまでは期待できず、こうした状況のもとで、試験の円滑かつ適正な実施には限界があると考えております。
自己採点については、様々な取組を行うことにより、一定の改善を図ることができることは確認しましたが、採点結果との不一致を格段に改善することまでは難しく、現状では、受験生が出願する大学を選択するに当たって支障になるとの課題を解決するにはなお不十分だと考えております。
この間、国会審議をはじめとして本件に関し様々なご意見が出され、受験生の立場に立って、早く結論を出すことが何をおいても重要だと考えてまいりました。
これらのことから、再来年(令和3(2021)年)1月実施の大学入学共通テストにおける記述式問題の導入については、受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点において困難であり、記述式問題は実施せず、導入見送りを判断をいたしました。
再来年1 月の共通テストに向け勉強している生徒や、保護者、教師をはじめとする関係者の皆様にはご迷惑をおかけする結果となり、誠に申し訳なく思いますが、ご理解を賜りたいと存じます。
今般の大学入試改革は、子供たちが未来を切り拓くために必要な資質・能力の育成を目指して、高校教育改革、大学教育改革とともに「高大接続改革」の一環として取り組んでいるものであります。初等中等教育を通じて論理的な思考力や表現力を育て伸ばすことは、大変重要であり、それらを評価する観点から、大学入試において記述式問題が果たす役割が大きいことに変わりはありません。
今回、令和3年1月の大学入学共通テストでは記述式問題は実施せず、導入見送りを判断しましたが、各大学の個別選抜において記述式問題の活用に積極的に取り組んでいただきたいと考えており、文部科学省として、各大学に対してそうした取組をお願いしていきたいと思います。
また、私の下に設置する検討会議において、共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題の在り方など大学入試における記述式の充実策についても検討してまいりたいと考えております。
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