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【指導助言から】

櫻田武です。

今年度も特別支援学校の研究に楽しくお手伝いさせていただきました。

そのまとめの授業研究会での記録もいただきましたので、その中から、私の指導助言をここでシェアいたします。


(1)単元の設定の大切さ 


椅子に座って考える時間が長かったが、3人の生徒が説明文を考えて表現する姿を見た。後半、INさんの集中力が切れかかっていたがそれでも粘り強く活動していた。これまでの先生方の積み重ねがあったと思う。私はUDの研究をしているが、今日の授業の成功には次のような要因があると思う。 

まず、意味のあるゴールを設定していた。ピザは好きだと思うし、ピザをごちそうするゴールに向けた活動する意欲があり、目的も明確だった。本時のゴールの意味も目的(パーティーをする)も板書にあった。通常学級でも何のために算数をやっているか分からないために授業から離れてしまうことがある。「意味のあるゴール」は通常学級でも大事にしている。 

授業研究会は本時の授業を見ているが、単元というユニット、ストーリーがよいかどうかが非常に本時の授業に関わってくる。児童の実態把握をしてストーリーをいかにうまく作るかが大切になる。それがこの授業の成功の秘訣だった。 


(2)学びのユニバーサルデザインの視点から 


細かいところでは、バリア(気が散るもの)をよせること(黒板を見るときは机上にタブレットを置かないことなど)も配慮されていた。この授業を繰り返してこれまで保護者や新任の先生にやってきたピザ作りをやってきたことが今回の説明文に結びついていることもよかった。鉛筆で書いてロイロノートに打ち込むなどテクノロジーやアクセシブルといった側面でも工夫されていた。 

また、T2がタイミングよく動いていた。それまでにTT間でいろんな話し合いがあり、子供達のチャレンジやサポートを最適にしてきたと思う。子供達の関わりは少なかったが、先生たちが関わっていることで学年の所属感やコミュニティが育まれてきたと感じる。

 スライドの数字は「学びのユニバーサルデザイン3.0」の数字である。その目的は学習者エージェンシーを育むこと、自分たちが学びのエキスパートになることである。UD L3.0(ユニバーサルデザイン・フォー・ラーニング・添付資料)の資料は授業を見るときにも活用しやすい。(ただし、このマトリックスは「チェックリストではない」ことをバーンズ亀山氏は話していますのでご注意を。)

 

(3)5つの言語意識 


私は国語科の小森調査官から「言語活動を行うときに5つの言語意識を大事にしてください」と言われてきた。これは言語活動だけではなく、あらゆる活動に当てはまり、本時の授業でも当てはまる。 

目的意識では、何のために材料の紹介文を考えて表現するのか、小学部のお友達に分かりやすいようにという目的がある。相手意識は小学部児童、場面意識は11月19日開店「せんぼくのピザや」の場面を意識させている。方法意識はプレゼンテーション「ピザ太郎物語」で各キャラクターになるという方法を取り入れている。評価意識について今日は振り返りの時間がなかった。振り返りで自分の学びができたということが自己有用感につながる。何時間かに1回はぜひ入れてほしい。途中でも評価してもよいので評価の時間を確保する。しかし、「6月は保護者、10月は新任の先生への活動を振り返った上で今日の活動がある」という意味で、評価意識もあったと思う。 


(4)個別最適な学び 

学習の個別化では、現担任だけでなく前の担任にも聞いて、実態把握に基づいた目標設定やワークシートの個別化もすばらしかった。 

学習の個性化について、TYさんの作文を生かしてワークシートを変更していた。ワークシートの危険性は、それを続けていくと子どもたちが先生の正解を求めてしまうことである。主体的な学びにつながらない危険性がある。今日はTYさんの「ぱらぱらトマトをまきます。」の表現がワークシートと合わなかった。先生がワークシートを変えてくれて「自分の言葉で作文した」のでよかった。 

ワークシートは学習の個別化ではあるが、学習の個性化、子ども主体の側面は薄くなる。例えば、ワークシートを並べて自分のやりたいものを選んでいくなど自己選択をさせるのもよい。ワークシートがかぶると学び合い、協働的な学びにつながる。 

Iさんはあっという間にできてしまった。「あとトマトについて紹介したいことはないかな」「トマトは赤い色です。同じ赤い色のものはないかな?りんごも赤い色です」などと、自由記述欄、自分で作文できる欄を設定すると、今までの語彙がプラスされたり、他の人に語彙を使ったりするなどにつながる。 


(5)協働的な学び 


もう少し協働的な学びがほしいと思った。話し合いでの関わりが苦手な子もいるかもしれない。KIさんに教えてもらう機会も作れる。読む場面でお友達の作文を読んでみる。ASDのINさんは気に入った文言を使おうとする。それを利用すると「包丁で切ります」などで違う語彙が入ってくると思う。 

語彙の「彙」はハリネズミという意味である。語彙はことばのハリネズミである。1つの語を中心に、連想でとげを増やしていくほど、語彙力は確実に豊かになる。たとえば「トマトは赤色です。リンゴと同じ赤色です。」または「ピーマンは緑色です。トマトとは色が違います。」のような形で一工夫すると、語彙を増やせると思う。

 

(6)国語の学びを生かすために 


小学部児童が分かりやすいように、本時の授業で生徒たちが「どう話す・書く」かが「国語」の学習という点で大切になる。例えば、「ゆっくり話す」「大きく書く」「漢字を使わない」「短い文にする」「難しい言葉は使わない」ということをみんなで話し合ったり、考えたりして、今日の学習に生かすことができたと思う。KIさんの文章は小学部の高学年を意識していたと思う。小学部高学年の「○○さん」に伝わるようにまでを意識できればよかった。顔写真等も黒板に貼ることで意識化できる。そして、当日に○○さんの感想「すごく分かりやすかった」などの評価があれば、自分の評価にもつながる。 


(7)児童生徒の特性への配慮と包摂性 


ASDの子どもたちは、こだわりや言語の問題の他に、疲れやすい特性があり配慮が必要である。今日は「ピザ太郎物語を完成させる」という目標だった。しかも全員がトマトとピーマンについて紹介文を書かなければいけなかった。例えば、チーズ、コーン、ソーセージ、トマト、ピーマンからの選択制、子ども主体のチャレンジ性(子供主体)にする。できる子はたくさんやればよい。難しい子は少し量を減らす。 

次の学習指導要領のキーワードは包摂性である。児童生徒に合わせて目標や課題、時間がスペクトラムの形になり、学校の自由裁量になる。その場合、目標の個別化・個性化、課題の個別化・個性化、時間の個別化・個性化になり、ゆるやかな形になる。これは特別支援学校の得意分野だと思う。作業学習でも自由裁量の側面があると思う。ASDの子にも配慮して、生活単元学習のよさが国語に偏りすぎると楽しくなくなるので注意が必要である。 


(8)生成AIの活用について 


他県の小学校では生成AIを使いだしている。例えば、INさんは「たねを……」で止まってしまい、“とる”ということばが出てこなかった。先生も苦労されていた。ChatGPTに“「ピーマンの種を」の次につながることばを教えてください”と聞いてみると、「取り除く」「取り出す」などいろいろ出てくる。「どれがいいかな」などと選択させる方法もいろいろ出てくると思う。そこで新しい言葉を学ぶかもしれない。

 

(9)先生方が「子どもたちの‟笑顔“」のために学び合う 


TYさんは1枚目の紹介文ができたときに「小学部の先生に聞いてみよう」と思ってすぐに聞きに行っていた。あれは「満足できる紹介文ができた」「すぐに評価してもらいたい」という気持ちだったと思う。そういう気持ちを大事にしたい。「できない」ことに対し、「できないかな」と思って先回りすることもあると思う。しかし、障害者権利条約の言葉でもあるが「私たちのことを私たち抜きに決めるな(Nothing about us without us)」がある。子どもたちに「やってみてどうだった?」「次に何をしたい?」などと聞いて、子どもたち自身が「楽しい」「面白い」と思える授業づくりを行ってほしい。また、先生方が子どもたちの笑顔のために学び合うチームであってほしいと思う。 


それでは、また。


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◇櫻田の推し本


「学級経営11の武器:応用行動分析学で子どもが変わる」 河村優詞


特別支援教育に携わって、国立特別支援教育研究所で応用行動分析を学んだときに「これを通常学級に、授業に、生徒指導に、学級経営に生かせばいいじゃん!」と感動したのを覚えています。

この本は、そのヒントを分かりやすく教えてくれます。

あなたの見方・考え方を広げ深めてくれる1冊だと思いますよ。

ぜひ、読んでください。

 
 
 

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